書籍情報
書籍名 | スーパープログラマーに学ぶ最強シンプル思考術 |
著者 | 吉田 塁 |
出版社 | ディスカヴァー・トゥエンティワン |
出版日 | 2016年5月14日 |
ページ数 | 127ページ |
ジャンル |
この本の結論と要点
この本の結論
本書は、モデルベース思考という思考法について詳しく解説している一冊です。
モデルベース思考は、ビジネスに限らず様々な場面で活用できる思考法であり、文章作成やプレゼンテーション作りにも応用できるということが紹介されています。
また、モデルベース思考は暗黙知を形式知に変えることができるため、具体的な例を通じて人が陥りやすい失敗に気付くことができます。
暗黙知とは言語化しづらい、説明しづらい知識のことで、分かりやすい例だと車の運転などです。ビジネスにおいては「個人の経験に基づくもの」や「属人化されたもの」などが当てはまります。
一方で形式知とは、誰でも理解しやすい知識のことで、教科書や、マニュアル化されたものなどが当てはまります。
本書の要点
本書の要点を大きく5つにまとめると以下の通りです。
- モデルを作る際には、まず目的と視点を明確にすることが重要
- モデルにおける要素が網羅されていることと、無駄がないことが重要
- より理解しやすいモデルを作るためには要素同士の関係性を表現する
- 要素の抽象度を調整することが重要
- モデルの良し悪しを確認するためには他人からのフィードバックが効果的
この本の細かい解説
モデルベースの思考法とは
モデルとは「複雑な物事をシンプルに表現したもの」という意味で、「起承転結」や「人体模型」などもモデルの一つです。
人体模型と全く同じ大きさ、骨格を持った人はいませんが、そこから大きく異なっている人もいません。
人体模型は人の持つ骨格の共通項をまとめ、シンプルに表現したものといえます。
つまりモデルベース思考とは、複雑な物事における要素をシンプルに、構造的に整理してから考えるということだと言えます。
「複雑な物事をシンプルに表現する」というモデル化には、以下のようなメリットがあります。
- 図解化することで理解がしやすい
- 全体像を掴むことができる
- 論理的に考えることができる
- そのモデルを元に発想を広げることができる
また整理したモデルの抽象度を高めることにより、新しいビジネスモデルの発見や、逆に現在の自分たちのビジネスモデルの強みや弱点の発見にもつなげることができます。
他にも文章作成やプレゼンテーション作りにおいても、モデルベース思考を活用することで、誰にでも理解しやすく、論理的でありながら発想を広げることにもつながるような資料を作成できると言えるでしょう。
より良いモデルを作るためには
よりよいモデルを作るためには以下の4つのポイントが重要です。
- 目的を明確にし、視点を定める
- 要素を過不足なく網羅する
- モデルの抽象度を調節する
- 関係性を表現する
1つ目のポイントは「目的を明確にし、視点を定める」ということです。
無闇にモデル作りに勤しむのではなく、そのモデルを作ることの意義について考えることが重要です。
モデルを作る意義を考える上で役立つ方法として、そのモデルの意義を一言で答えられるようにする、というものがあります。
ただし、いきなり一言で答えられる必要はなく、大事なことはその意義について考えることであり、その思考とモデル化を並行して進めても問題ありません。
2つ目のポイントは「要素を過不足なく網羅する(MECEにする)」ということです。
MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive・モレなくダブリなく)ではないモデルは、正確な理解や分析に役立ちません。
MECEなモデルを作るためには、要素を一旦削除してみて、それでもモデルが理解できるかどうかを確認するというプロセスを試してみます。
もし要素の関係が適切に表現されていないと、モデルが理解しにくくなったり、意味が分からなくなったりする可能性があります。
3つ目のポイントは「適切なモデルの抽象度を設定する」ということです。
抽象度を上げることと抽象化、下げることを具体化といい、抽象化とは物事をより一般化することです。
例えば「犬」を抽象化すると「動物」となり、犬を具体化すると「チワワ」や「柴犬」などになります。
モデルの要素が抽象的すぎると当たり前のことしかいえず、逆に具体的すぎると情報が多すぎて伝えたいことが伝わりません。
モデルの抽象度が適切かどうかを確認するためには、まず完成させる前に他の人に見てもらうことです。
そのフィードバックや反応を元に、もう少し具体的にするか、抽象的にするかの判断をすればよいのです。
4つ目のポイントは、「関係性を表現する」ということです。
モデルは、単に要素を列挙するだけではなく、それらの要素がどのように関連し合っているのかを示すことで、より理解しやすいものになります。
例えば、物語のモデルである「起承転結」においては、物語がどのように進行していくかを示すために、起承転結の順番が重要です。
もし順番が逆になってしまったり、要素同士の関係が不明瞭だったりすると、読者にとって物語の理解が難しくなってしまいます。
「起承転結」の関係性を分かりやすく表現するためには、要素を線で結ぶ、階層構造で示す、などを行うことで「順番」を表現できます。
また要素を線で結んだ上で、どういう関係性か一言や数単語で表現する方法もあります。
要素の関係が明確にすることで、モデルの改善や発展、必要・不要な要素の発見につながります。
まとめ
本書を読んだあと、私が過去に職場で新人研修的なものの中で、「ロジックツリー」の説明をした時のことを思い出しました。
説明し終えたあと、新人の方から「より良いロジックツリーを作るために、練習できることはありますか?」と質問をもらったのですが、当時の私はその質問に対して良い回答をすることができませんでした。
本書は、表現は違えど「ロジックツリー」をより良く作るための方法や、その応用方法まで言及しており、社会人なりたての人から、新たに管理職になった人、そして経営者にもタメになる一冊だと思いました。
個人的には後半の、モデルの応用方法が興味深かったです。
また全体的に図が多く使われていることや、「ことわざ」という日本人にとって馴染み深いものを「モデル化」して説明されていたので、非常に読みやすく、理解しやすいと思いました。