書籍情報
書籍名 | 外資系コンサルのプレゼンテーション術 - 課題解決のための考え方&伝え方 |
著者 | 菅野 誠二 |
出版社 | 東洋経済新報社 |
出版日 | 2017年12月22日 |
ページ数 | 293ページ |
ジャンル |
この本の結論と要点、学び
この本の結論
本書ではビジュアルコミュニケーションにおけるチャートの作成方法やプレゼンテーションの技術について詳しく説明されています。
これらのスキルや技術は、ビジネスや学術分野でのコミュニケーションにおいて非常に重要であり、プレゼンテーションを成功させるために役立ちます。
そのスキルを以下のステップで細かく解説しており、外資系コンサルが、いかにして価値のあるプレゼンテーションを作成しているかの指南書になります。
- Set up:やること・優先順位の決定
- Why:ゴールを確認する
- What:ストーリーを考える
- How1:資料作成の基本
- How2:実演と準備のコツ
この本の要点
この本の要点を4つにまとめると以下の通りです。
- プレゼンテーションのゴールを決めるときは、まずDAU分析を行い意思決定者やキーパーソンを把握する
- 良いストーリーはただ合理的なだけではなく、「信頼訴求」「合理訴求」「感情訴求」を聞き手にあわせて組み合わせる
- 文章を中核としたチャートにおいては「手短に簡潔に表現する」ことが重要
- 良い資料作りだけでなく、プレゼンテーションは準備も非常に重要
感想
この本は、プレゼンテーションにおいて注意すべき点や、効果的なチャートの作り方、ストーリーテリングの方法など、ビジネスプレゼンテーションに必要な情報が詳しく説明されています。
特に、プレゼンテーションの開始時に緊張感がピークに達することや、同調者を探すことで落ち着きを取り戻すことができること、そしてストーリーテリングにおいてはピラミッド構成が有効であることなど、具体的なアドバイスが 多数含まれています。
また、チャートの作成においては、文字の読みやすさや視認性に注意を払うことが重要であること、そしてビジュアルで騙さないことが大切であることなど、具体的なテクニックが紹介されています。
この本を読んで、プレゼンテーションにおいては、相手に伝えたいことを明確にし、ストーリー性を持たせることが重要であることがわかりました。
また、チャートの作成においては、文字の読みやすさや視認性に注意を払うこと が大切であることも理解できました。
このようなアドバイスを実践することで、プレゼンテーションの効果を高め、相手に伝えたいことをより明確に提供することができると感じました。
全体的に図表を多く交えながら説明がされていたため、体系的に学びやすい一冊だと思います。
この本の細かい解説
ゴールとストーリーの決定
まず、プレゼンテーションのゴールを決めるためには、DAU(Decision Making Unit)分析を行い、承認者・決定者・影響力者、そしてキーパーソンの特定からはじめます。
そしてキーパーソンの嗜好や社風を理解することにより、好まれ求められるプレゼンテーションを決定します。
その上で、クライアントが何に困っているのか、なぜそれをしなければいけないと思っているのかを明確に理解する必要があります。
クライアントの理念や使命から発する事業の動機や背景、戦略目標を確認する必要があります。
また、プレゼンター自身もなぜこのプレゼンをするのかを問い、目的に応じたゴールを確認する必要があります。
このように、まずはプレゼンテーションのゴールを決定するために、ステークホルダーに関連する情報や、クライアントの課題や背景など、様々な情報を集めていきます。
そしてストーリーを決めるためには、そのキーパーソンの嗜好や、意思決定のレバーを理解した上で、
- 合理訴求
- 信頼訴求
- 感情訴求
を上手く組み合わせ、「信頼訴求(導入)」→「合理訴求(本論)」→「感情訴求(結び)」というストーリー展開にします。
最初の信頼訴求では、自分やチームのことなど、パーソナルストーリーを語ることで、信頼を得やすくする工夫をします。
また本論である合理訴求では、ピラミッド構成で表現し、まず結論から述べ、その理由を補助していく方法が適しています。
「起承転結」という方が物語の構成方法として馴染み深いですが、ビジネスの場においてはロジックが飛躍してしまう可能性や、結論を急ぐ相手に優しくないなどのデメリットが発生してしまうためです。
そして最後に、聞き手の怒りや不安、帰属意識、興味関心などを促すなどの感情訴求を行うことで、プレゼンテーションを成功に導くことができます。
「伝わる」プレゼンテーション
伝わるプレゼンテーションを実現するためには、大きく分けると以下の2つのポイントが重要です。
- 伝わりやすい資料作り
- プレゼンテーションの事前準備
伝わりやすい資料作りにおいては、例えば文章が中心のチャートにおいてはKISSアプローチが重要です。
KISSの意味には3つの説があります。
- Keep It Short and Simple(手短に簡潔に表現する)
- Keep It Simple, Stupid!(簡潔に表現する、それができないなら知恵が足りない)
- Keep It Simple for Stupid(馬鹿にでも分かるように簡潔に表現する)
KISSアプローチを実践するためには、まず文章の要点を明確にし、それに基づいて簡潔な表現を考えることが必要です。
そして冗長な表現や余計な言葉を省くことも重要です。ただし、必要な情報を省いてしまうと、相手にとって理 解が困難になる場合があるため、バランスを考えながら表現することが求められます。
KISSアプローチを取り入れることで、チャートの読みやすさが向上し、相手に伝えたいメッセージが明確になります。
また、簡潔な表現にすることで、相手にとって重要なポイントが強調され、情報の取捨選択がしやすくなります。
さらに、短い文章で表現することで、相手の興味を引きつけることができ、プレゼンテーションの効果を高めることができます。
他にも1枚のチャートには一番主張したいメッセージを1つに絞り込み、単純化を心がけることです。
1チャート1メッセージが原則であり、追加したい主張が他にあれば、それは次ページに分けるべきです。
1枚に詰め込んだ5つのメッセージを話すよりも、5枚に 分けたほうがページごとの展開ができてシンプルでストーリーがわかりやすくなります。
このポイントは、プレゼンテーションにおいて、聞き手が受け取りやすく、印象に残りやすいチャートを作成するための重要なポイントです。
多くの情報を1枚のチャートに詰め込むと、聞き手が情報を理解するのに時間がかかり、印象に残らない可能性があります。
そして、プレゼンテーションには事前準備も非常に重要だと述べています。
リハーサルの重要性や、「先んじる」「場を仕切る」などの当日の心構え、身振り手振りや、「リフレーズ」「サマライジング」など、精神的な部分から技術的な部分まで、プロフェッショナルは配慮します。
まとめ
本書は、プレゼンテーションの準備から当日の仕切り方まで「プレゼンテーションの極意」の集大成のような印象でした
冒頭でも述べた通り、全体的に図表が多く用いられており、内容が頭に入ってきやすい一冊でした。
特に「プレゼンテーションの準備」のパートにおいては、プレゼンテーション慣れしてしまうと疎遠になりがちなもの(練習や立ち振舞など)の重要性が多く記されており、個人的には耳が痛い(いい意味で)内容だと感じました。
コンサルタントに限らず、クライアントに対してプレゼンテーションをする仕事についている人であれば、目を通しておいても損はないと思います。