書籍情報
書籍名 | ファシリテーションの教科書 - 組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ |
著者 | グロービス(吉田 素文) |
出版社 | 東洋経済新報社 |
出版日 | 2014年10月31日 |
ページ数 | 204ページ |
ジャンル |
この本の結論と要点、学び
この本の結論
議論をまとめるためには具体的な話題や状況を提示し、仮定によって制約を外して意見を言いやすくすることが効果的であるということです。
また、議論がまとまらない場合には、論点を細分化し、合意できている部分と合意できていない部分を確認し、合意に必要な条件を満たすための検討を行うことが重要であると述べられています。
具体的な話題や状況を提示することで、議論の方向性を明確にし、参加者がより具体的な意見を出しやすくなります。
また、仮定によって制約を外すことで、参加者がより自由に意見を出しやすくなります。これによって、より多様な意見が出され、より良い結論が導かれる可能性が高まります。
議論がまとまらない場合には、論点を細分化し、合意できている部分と合意できていない部分を確認することが重要です。
さらに、合意に必要な条件を満たすための検討を行うことで、議論を進めることができます。
このように、具体的な話題や状況を提示し、仮定によって制約を外し、論点を細分化し、合意に必要な条件を満たすための検討を行うことが、議論をまとめるために重要であるということを、この本では伝えています。
この本の要点
この本の要点を5つにまとめると、以下の通りです。
- 相手の主張を理解するためには、まず主張を明確にする
- 相手の主張が適切に成立するためには、何が足りないのかを考える
- 議論する際には、どの論点に対して意見を出すべきか、どの論点は簡単に済ませるべきか、どの論点は議論するべきでないかを考える
- 特に重要な論点については、より詳細に、具体化して考える
- 自分が考えたことを正しいと決めつけず、相手の話を理解することにフォーカスする
学び
この本を読んで、会議や議論を進める上でのファシリテーターの役割や、議論の方向性について考えさせられました。
会議や議論は、多くの人が集まって行うものであり、それぞれが異なる意見やアイディアを持っています。
そのため、ファシリテーターは、参加者の発言を促し、意見をまとめることで、議論を進める役割があると感じました。
また本全体の感想としては、イラストが使用されていたため、読みやすく、内容も頭に入ってきやすいと思います。
この本の細かい解説
論点の洗い出し
この本では、議論の骨格をつくるために論点を洗い出す方法を説明しています。
例えば、「ある市場に進出すべきか?」というテーマであれば、その問いに答えるために判断を左右するポイントを洗い出し、
「市場は魅力的か?そこで競合に勝てるか?当社の強みは活かせるか?細みは問題にならないノ補完が可能か?」といった形で論点を細分化していきます。
そこから更に細分化し、「市場は魅力的か?」という論点を「規模は大きいか?成長率は高いか?収益性は高いか?」というように、さらに掘り下げ論点を細分化していきます。
このように、論点を洗い出すことで、ファシリテーターは、重要度でグラデーションがついた、いわば「論点の地図」といえるようなものを作り出すことができます。
この地図を持っているからこそ、さまざまな意見を正しく理解し、位置づけ、方向づけることが可能になります。
そして次のステップとして、「論点同士の関係を考え整理する」ということをおこないます。
論点を洗い出した後、それらの論点同士の関係を整理することで、より論理的かつ明確な議論を進めることができます。
まず、似ている論点を2つ~4つ程度にグルーピングします。
例えば、ある市場に進出すべきかというテーマであれば、「市場は魅 力的か」「そこで競合に勝てるか」「当社の強みは活かせるか」「細みは問題にならないノ補完が可能か」といった論点があるとします。
この場合、似ている論点をグルーピングすると、「市場の魅力度」と「競合力」という2つのグループに分けることができます。
論点の地図をつくる
どの論点は議論するべきでないかを判断することは、議論の効率性や成果に大きな影響を与えます。
議論するべきでない論点とは、議論の目的やテーマから外れた、あるいは議論しても解決できない、あるいは議論すること自体が無意味な論点のことを指します。
例えば、議論のテーマが「企業の業績向上策について」である場合、そのテーマから外れた論点として「政治的な問題について」や「個人的な趣味や嗜好について」などが挙げられます。
また、議論しても解決できない論点として「未来予測について」や「過去の出来事についての責任の所在について」などがあります。
さらに、議論すること自体が無意味な論点として「全員が同じ意見になることが前提の論点」や「誰もが既に答えを知っている論点」などがあります。
これらの論点は、議論の進行を妨げたり、時間を無駄にすることになります。
そのため、議論の目的やテーマに沿って、議論するべき論点と議論しないべき論点を明確にし、重みづけをすることが重要です。
また、議論するべきでない論点が出てきた場合には、ファシリテーターが適切に対応することが求められます。
例えば、その論点がテーマから外れたものであれば、テーマに戻すように促したり、その論点が議論する価値があるものでない場合には、議論をやめるように働きかけることが必要です。
そして必要な論点・不要な論点を洗い出し、議論の中で重要な論点をグラデーションをつけた「論点の地図」を持ちます。
「論点の地図」を持つことで、ファシリテーターは、議論の中で重要な論点を正しく理解し、参加者の意見を位置づけ、方向づけることができます。
また、参加者にも、議論の方向性や重要なポイントを明確に伝えることができます。
まとめ
この本では論点をいかに広げ、いかに整理し、いかにグラデーションをつけ、いかに深掘ればいいのかについての各方法論を細かく解説されています。
これまで説明してきた通り、「論点の地図」を作るためには大きく分けて以下のステップを踏みます。
- 論点を洗い出す
- 似ている論点をグルーピングする
- 重要な論点を絞り込み、グラデーションをつける
- 論点の判断軸を洗い出し、比較する
私自身もファシリテーションを担う場面がありますが、ここまで体系的にファシリテーションに臨んだことはなく、「洗い出す」程度しかしていなかったので、
今後はこの本を参考に「洗い出す」以降のステップにもチャレンジしてみようと思いました。