書籍情報
書籍名 | みんな違う。 それでも、チームで仕事を進めるために大切なこと |
著者 | 岩井 俊憲 |
出版社 | ディスカヴァー・トゥエンティワン |
出版日 | 2022年8月26日 |
ページ数 | 224ページ |
ジャンル |
この本の結論と要点
この本の結論
本書の結論は、リーダーが部下に対して注意や期待を示す際に、前向きで明確な全体的な視点を持つことが重要であるということです。
また、目標を追い求めすぎることで目的を見失うことがあるため、リーダーは常に「そもそもの目的」を意識し、部下を的確に評価し、能力を引き出すことが求められます。
さらに、リーダーは人間を広い視点で見ることが重要であり、部下の長所に目を向けることで能力を引き出すことができます。
リーダーは注意や評価を伝える際にも、怒りや叱りを全面的に出さずに、注意とともに「期待を示す」ことが重要です。
これらのポイントを意識することで、リーダーは建設的な関係を築き、部下のやる気を引き出すことができます。
本書の要点
本書の要点を大きく5つにまとめると以下の通りです。
- リーダーは全体的な視点を持ち、前向きな印象を与えることが重要
- リーダーは部下の長所に目を向け、能力を引き出す役割を果たす
- 目標にこだわりすぎず、そもそもの目的を見失わないようにする
- 詩張を避けるために、「みんな」「全部」「いつも」といった大げさな表現を避ける
- 注意や指摘をする際は、怒りや叱りとは異なるアプローチを心がける
この本の細かい解説
建設的で前向きになる
はじめに、良いリーダーになるためには何事にも建設的であり前向きにならなければなりません。
建設的で前向きなリーダーであれば、困難や障害に直面しても、チームや部下を励まし、前向きな解決策を見つけることができます。
そして失敗や挫折を学びの機会と捉え、成長のための経験として受け入れることができます。
更にこのような姿勢はチームメンバーに対しても希望や自信を与えることができ、チーム全体のモチベーションを高め、目標達成に向けた努力を促します。
また良いリーダーは「劣等感」を成長の糧にできるかも重要です。
劣等感とは、アドラー心理学においおて「自分たちがこうなりたい、こうありたい」という目標と現状のギャップに対してネガティブな感情を抱くことを指しています。
アドラーは劣等感のことお「健康で正常な努力と成長への刺激」と言っており、この劣等感を活かすも殺すも人次第であるといえます。
この「劣等感」を「自分の足りていない部分」だと建設的に捉え改善の糸口を探すか、単に目をつむってネガティブな気持ちで居続けるか、良いリーダーは当然前者の方向に動かなければなりません。
人は「みんな違う」
上述した「劣等感」も、何に対して劣等感を抱いているのか、人によって違います。
また劣等感以外にも、どんな時に嬉しいと思うのか、どんな時に辛いと思うのか、どんな仕事にやりがいを感じるのか人によって違います。
チームにおいて、これらの価値観が大きくズレすぎていると問題の原因になります。
そのためリーダーは、まず自分と部下の価値観の調整をしなければなりません。
価値観を調整するために、具体的には以下のような方法があります。
- より広い視点で考える
- 他の人の意見を聞き「視点を借りる」
- 「職場の視点」ではなく「一般社会の視点」で考える
また部下との価値観の調整をする際に「絶対」「必ず」「みんな」「全部」「すべき」などの大げさな表現や、決めつけるようなことは言ってはいけません。
これらは、「非建設的な表現であり」、決して「広い視点である」とは言い難い表現です。
リーダーは一つの例だけをとって、すべてのことに当てはめる過度な一般化は避けなければなりません。
目的・目標を掲げ続ける
リーダーの大きな仕事の一つとして「目的」「目標」を示すことが上げられます。
「目標」と「目的」は似たような言葉ですが、厳密には異なる意味を持っています。
「目的」とは「なんのために」この仕事をするのかという意味で、使命・ミッション・理念などの言葉に置き換えることができます。
「目標」とは「どこに向かって」この仕事をするのとかという意味で、具体的な行き先であるため、数字や成果で表現されることが多いです。
リーダーはこの「目的」と「目標」を示すことが重要で、これらによって部下のモチベーションが上下する可能性があることも頭に入れておかなければなりません。
またリーダーは会社の目的に沿って、部下の目標を一緒に設定する必要があります。
部下の目標を設定するにあたり、以下のポイントを意識することでより良い目標設定ができます。
- 目的を意識する。「目的あっての目標」
- 部下に期待していることを同時に伝える
- 決意や努力などの精神的なものを明文化する
- 目標をレベル分けする
部下への「注意のしかた」
目標に向かって進んでいるときに、部下が失敗したり、立ち止まったり、意欲を失ったりすることもあると思います。
その時に重要なのは「怒る」「叱る」のような感情的な対処ではなく、「注意する」という対処をとるべきです。
またその際に、「なんで、できないの?」「なんで、ミスしたの?」というような「なぜ」を問うことはおすすめできません。
なぜなら、「なぜ」を問うことは「解説」であり「解決」にはつながらないからです。
それよりも解決に導く質問に変えたほうが、建設的な「注意のしかた」といえます。
たとえばミスをした部下に「なんで、ミスしたの?」と聞くのではなく、「ミスを減らせるために、どうすればいいと思う?」と聞いてみましょう。
「なぜ?」は過去を振り返る質問であり、「どうすればいいか?」は未来を考える前向きな質問であるといえるでしょう。
まとめ
この本を読んで、過去に自分の部下に「なぜなぜ攻撃」をしていた自分が恥ずかしくなりました。
「同じようなことを起こしてほしくない」という気持ちは同じなものの、確かに別の前向きな表現があったなと思いました。
また本書ではふんだんに「アドラー心理学の考え方」が盛り込まれており、全体的に納得感のある内容でした。
本記事では紹介できませんでしたが、近年のチームビルディングにおけるバズワード「心理的安全性」についてもアドラー心理学の観点から解説されており、またそれを高める方法についても紹介されていました。(アドラー心理学では「共同体感覚」と表現されています)
本書のテーマ自体が「みんな違う」なので、ダイバーシティ・多様性という言葉が多く使われるようになった現代において、マネージャーの必読書とも言えるのではないでしょうか。
私自身も「みんな違って、みんないい」と思っているので、非常に共感できる一冊でした。